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新規事業の創出や企業文化の変革に不可欠な従業員の「熱量」はいかにして上げるべきか

公開日: 2024/05/10

新規事業の創出や企業文化の変革に不可欠な従業員の「熱量」はいかにして上げるべきか

サマリー
新規事業の創出や事業変革などがなかなか進まない理由は何か。クリエイティビティの力を軸に人と組織を動かし、事業変革と企業変革に伴走支援する電通のアプローチを紹介する。


新規事業の創出や事業変革などを手掛けても、「組織の活力や成長につながっていない」と悩む経営者は少なくない。そこで注目されているのが、クリエイティビティの力を軸に人と組織を動かし、事業変革と企業変革に伴走支援する電通のアプローチだ。実際、どのような手法で課題を解決しているのか。電通 第2ビジネス・トランスフォーメーション局長の山原新悟と、同局DXビジネス戦略1部長の山内明子に聞いた。

新規事業のトレンドワードは「ワクワク」から「覚悟」へ

――コロナ禍は、企業のデジタル化を加速させるなど、経営環境や経営者の意識を大きく変えました。新規事業についても、何か変化を感じていますか。

山原 経営者の意識は明らかに変わりました。コロナ禍前は業界を問わず、「ワクワク感のある新規事業を創出したい」など、「ワクワク」という言葉を耳にする機会が多くありました。いまはそれに加えて、「覚悟を持ってどう生み出すか」など「覚悟」という言葉をおっしゃる経営者が増えています。コロナ禍前はパーパス(存在意義)をより拡張して再定義し、本業と非連続的な領域で新事業をつくっていこうという意識が「ワクワク」という言葉に表されていたと思います。それが一巡したいま、「新規事業の種はあるが、太い柱に育っていない」という課題に直面する日本企業が増えました。

 その結果、飛び地の新規事業よりも、もともと持っている自社の強みやR&Dの種を再評価し、既存事業の隣接領域で骨太な事業の開発に回帰する傾向が見られます。同時に、企業文化が変わらなければ、新しい事業も柱に育っていかないという意識が「覚悟」という言葉に表れていると思います。 

山内 パーパスを見直して事業領域を拡張すること自体は間違っていないと思います。問題なのは「太い柱」につながらないという理由で、やり切れていないこと。新規事業のアイデアはたくさんあっても、大きなビジネスに育つ見通しが立たないため、その多くが「PoC」(概念検証)で終わってしまっている。社会実装してもその後の投資対象にならないことが多いのが実情です。つまり、やらなくてはいけないことはわかっているけど、なかなかやり抜くことができない……。こうした課題や悩みを抱えている企業経営者は多いのではないでしょうか。

――新規事業の創出や事業改革などの変革をやり抜くには何が必要ですか。

山原 先にお話ししたように、直近で最も多いご相談は「企業文化を変革したい」というものです。結局、DX(デジタル・トランスフォーメーション)や人的資本経営、パーパスの刷新、新規事業の創造などの変革に取り組んでみたものの、「従業員や組織が変わらないと、真の変革にはつながらない」という意識が強いのだと思います。 

電通
第2ビジネス・トランスフォーメーション局長
山原 新悟
Shingo Yamahara
企業の経営層に対して中期経営戦略の策定、企業文化変革の設計と推進の伴走、新規事業創出支援など幅広くBX(Business Transformation)領域のアドバイザリーを務める。また2022年に都市開発、地域創生を手掛ける電通グループ横断組織「都市の未来デザインユニット」を立ち上げ、推進。

山内 たとえば、新規事業の創造における組織文化の弊害の一つに、「プロセスの罠」があるのではと考えます。これは、検討プロセスが整備されることが重要である一方で、プロセスごとのフレームを埋めることが優先され、現場の意思が伴わない、異なる視点での意見を出しにくい、などの弊害も生じているように感じています。「これが本当にお客さまに届けたい価値なのか、もっとこんな新しい価値を届けるべきでは」といった疑問点や新しい視点を、現場で活発に、意思を持って論じ合える風土がなければ、真に魅力のある事業は生まれません。とはいえ、こうした組織文化は、ファジーな概念なので、非常に難しい課題だとも思います。  

山原 なぜ従業員のマインドセットが変わっていかないのか。それは経営陣から「ゴール」は通達されても、その共感や一人ひとりへの浸透には至っていないからです。パーパスの策定やDXツールの導入だけではなく、目指すべき姿の解像度を高め、そこに向けた変革のストーリーへの共感を高めて、従業員の“熱量”を上げていくアプローチが重要になります。

従業員の“熱量”を上げ、企業文化を変えていく

――従業員の“熱量”はどのようにして上げていけばよいのでしょうか。

山原 従業員のインサイトを丁寧に把握し、それを変革の戦略に組み込む。誰もが覚えやすく語りやすいコンセプトと戦略図を策定することも重要です。議論が起こることが大切なのです。そして変革のプロセスに従業員を積極的に巻き込み、社内にうねりを生み出す。変革の構想とメッセージには、企業のDNAを組み込むことも重要です。変わるべきことだけではなく、変わらず大切なことも伝える。この繰り返しを続けることで、熱量は高まります。 

山内 たとえば、当社で営業支援プラットフォームの導入を支援したケースがあります。単純に新しいシステムを導入するだけでは、「仏つくって魂入れず」という事態にもなりかねません。

 当社の場合、まず現場のインサイト(行動の根拠や動機)を深く検証し、求められる機能と営業支援プラットフォームを選定します。この導入で「何を実現しようとしているのか」「どのような価値をもたらすのか」などの背景を明確に伝え、それによって「仕事がどのように変わっていくのか」という期待感を持てるよう設計しています。具体的には、導入・浸透プロセス自体に変革を意図するプロジェクト名称をつけ、現場業務全般を見通したうえで真に必要な機能を実装。浸透に向けて、経営層がその目的や意義をきちんと意思表明するとともに、新しい価値を生み出す取り組みであることをわかりやすい言葉やビジュアルを活用して周知することを支援しています。現場の従業員が共感し、熱量を持てることが重要だと思っています。 

電通
第2ビジネス・トランスフォーメーション局 DXビジネス戦略1部長
山内 明子
Akiko Yamauchi
営業部門、ヘルスケア領域専門コンサルティングチームを経て現職。製薬企業、製造業の新規事業開発や、中長期での研究開発領域策定、事業戦略策定など、企業の事業開発/事業変革支援に多数従事。“真にヒトを動かす”ことに重点を置いた、ヒト起点の検討アプローチを得意としている。

山原 散発的なプロジェクトで終わらないように、全体の戦略や事業と関連付けて設計しておくことも重要です。個々に存在しているように見える経営課題や事業課題も、会社全体を俯瞰するとお互いに影響し合っています。企業が生み出す価値が変わらなければ文化は進化しません。社内のあらゆる仕組みが変わらなければ、新たな事業は実現しません。サイロ化しがちな社内をつなぎながら、事業サイドと企業基盤サイドをリンクさせ、統合的に変革を推進することが重要になります。

――電通のコンサルティング事業の強みは、ずばり、何だと思いますか。

山原 企業変革、事業変革といった領域は、大胆な発想で戦略や勝ち筋をつくり出すクリエイティビティと、それを実現するプロデュース力が重要となります。そして、実際に人が動く仕組みをつくり出せること。これらは電通が長年にわたって組織的に培ってきた強みの一つです。これがトランスフォーメーションの領域でもユニークな強みとなっています。 

山内 先ほどの営業支援プラットフォームの導入支援プロジェクトのように、従来の枠組みに囚われない視点やアイデア、クリエイティブな打ち手への期待も大きいと感じています。変革し続けることで次々と新しい価値を生み出し、持続的な企業成長につなげていくのが私たちの基本的なスタンスです。そうした連続的な変革に伴走し、事業創造からラストワンマイルのマーケティングまでサポートできるのも電通ならではの特徴だと思います。


※この記事は、2024年5月10日「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」で公開されたコンテンツを一部編集し、掲載しています。

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